人のつながりとアーユルヴェーダ

ピックアップ

アーユルヴェーダの柱は2つあります。

  • 病気の人の病気治療
  • 健康な人の健康維持

「健康な人の健康維持」には、個人の健康に加えて、パブリックヘルスも入ると私は思っています。パブリックヘルスとは社会あるいは地域全体の健康状態のことです。個人の健康は社会の健康と関係しているからです。

そういうわけで、私は「社会的処方」にも関心があります。「社会的処方」とは「薬を処方することで患者さんの問題を解決するのではなく、地域とのつながりを処方することで問題を解決する」という考え方です。イギリスで生まれた考え方です。

先日、社会疫学・公衆衛生学を研究されている京都大学教授である近藤尚己さんのレクチャーを聞きました。タイトルは「健康の社会的決定要因」。非常に興味深い内容でした。

すでにわかっていることですが、人とのつながりがある人ほど健康を保っています。ご近所さんとのつながりとか、おしゃべりを目的としたカフェのつながりとか。こういう社会上の人とのつながりがある人ほど健康であることは近藤教授のデータからも明らかだそうです。

現代社会はこういう人とのつながりを持ちにくいのが問題なのですけど。

さらに興味深いことに、カフェにお客として行っておしゃべりをする時間をもつことは健康にプラスなのですが、カフェの運営で何らかの役割をもっている人のほうがさらに健康を維持できるのだそうです。

何らかの役割を担うことは、それが生き甲斐になり、心と体の健康につながるのです。人間には役割が必要です。インドの高齢者が認知症になりにくいのは、ターメリックを日常で摂取していることも一因でしょうが、家庭において役割があることも大きな要因でしょう。大家族主義のインドの家庭において、おじいちゃんやおばあちゃんは孫の世話をしたり、祭壇の神様のお世話をしたりして、家族の中で役割があります。日本の高齢者も昔はそうでした。人間は社会的動物。社会における役割が必要なのです。

そこで思い浮かぶのがヴェーダにおける人生の4つの区分です。ヴェーダ哲学では人生は4つの区分があると考えられていて、アーシュラマ(人生の四住期)と呼ばれます。

● ブラフマチャリ(学生期)

● グリハスタ(家住期)

● ヴァナプラスタ(林住期)

● サンニヤーサ(遊行期)

サンニヤーサは75歳以上です。物質的な富を手放してスピリチュアルな道を進む人生ステージです。日本語では「遊行期」と翻訳されているので、ぼんやりして日々を過ごしているように思われがちですが、ドクター・パルタップによると「ただ森の中でボーっとしているのではない」のだそうです。

サンニヤーサの人生ステージにいる高齢者は、若者に教育を施す役割を担っているのだそうです。これは高齢者にとっても若者にとっても大事だと思います。高齢者にとってはスピリチュアルな道を歩む上で社会での役割があるし、若者にとっては人生の先達から智恵を得ることができるからです。

こういう社会のシステムが必要だと思います。ヴェーダの哲学を土台にしているアーユルヴェーダにかかわっている人は、社会の健康のためにアーシャラマの考えを取り入れるべきだと思います。

★Dr.パルタップ・チョハン・ウェビナー★女性の生涯にわたる健康と美とウェルビーイング(3/12, 3/19)

★Swastha Program~アーユルヴェーダと現代ヘルスサイエンスの統合

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