コロナ禍において「肌感覚」とか「肌で感じる」という言葉をよく耳にします。「陽性者が増えていることは肌感覚としてわかる」とか「飲食店が疲弊していることは肌で感じる」というフレーズをよく聞きます。人間が感じる場所は肌つまり皮膚なのですね。
皮膚は最大の臓器です。皮膚は体外からの刺激から体を守るとともに、体内からの水分喪失を防ぎます。しかし皮膚の働きはそれだけではありません。皮膚には五感の働きがあることがわかってきました。皮膚は光をとらえ、音を聞き、味を感じる働きがあることが明らかになってきたというのです。
皮膚は脳と同じ働きをしていると言ってよいかもしれません。それを表す「皮脳同根」という言葉があります。皮膚と脳は発生学的に同じルーツを持つために密接に繋がっていることを示した言葉です。アーユルヴェーダは「心は感覚器官のボス」といいますが、皮膚と脳が同根だとすると、皮膚は心とも関係しているということです。心のストレスが強まると皮膚疾患が悪化するのはその例です。
皮膚と脳は同根なので、皮膚へのマッサージは脳のマッサージ効果もあります。だから皮膚をマッサージすると脳もリラックスできるのです。幸福ホルモンのオキシトシンも分泌されます。オキシトシンは脳からも分泌されますが、皮膚でもつくられます。
アーユルヴェーダのオイルマッサージがさらに優れている点は、温かいオイルを使うことです。オイルは体の細胞を滋養する上、オイルの滑らかな温かさが心に安心感を与えます。乳児がお母さんに抱かれて(お父さんでもいいですよ)、その温かさから安心感を得るのと同じです。
体はオイルに対して正直に反応します。プラクリティがヴァータ体質の人はオイルを吸います。細胞がカラカラの人はオイルをぐいぐい吸います。年齢を重ねると、だれでも「後天的プラクリティ」がヴァータになります。歳をとるほどオイルをぐいぐい吸いますね。ヴィクリティでヴェーダが増悪している人もオイルを吸います。一方、カファ体質の人はあまりオイルを吸いません。もともと体内に油分をたくさん持っているからです。自分の体質を隠そうと思っても、オイルを体に塗るとウソはつけないですね(笑)。
オイルマッサージは心にも働きかけるので、施術後に涙を流す人も珍しくありません。心のカタルシスの働きをするのでしょう。カタルシスとは、心の中に鬱積している情緒や感情を解放することを意味します。泣いたあとは心が浄化され、心が軽くなります。
アーユルヴェーダのオイルマッサージの効果は、言葉で説明できる以上のものがあります。