貧血は血液中のヘモグロビン濃度が低下する状態です。貧血になると、めまい、動悸、息切れ、体のだるさ、頭痛、いらいらなどの症状が現れます。日本女性の1000万人が「隠れ貧血」と推定されています。貧血の原因の一つは鉄分不足です。日本女性の10人に1人が「鉄欠乏性貧血」に悩んでいるとも言われています。
食事の変化により、日本人の鉄分摂取量は30数年前までの1日13mg強から現在では1日7mg程度にまで減少しています。加えて、過多月経の女性が増えていることも鉄不足を促しています。子宮筋腫、子宮内膜症、子宮内膜ポリープといった婦人科疾患が過多月経を増やしているのです。過多月経を伴う婦人科疾患はピッタの増悪とマーンサダートゥ(筋肉組織)の悪化が関係しています。ヘモグロビン濃度が低下する貧血はラクタダートゥ(血液組織)も悪化しています。
貧血を改善するためには、ピッタを整え、ラクタダートゥとマーンサダートゥを健康にする必要があります。「鉄欠乏性貧血」の場合は食べ物から鉄分を摂る必要があります。よほどの状態でない限り、鉄製剤より食べ物から鉄分を摂りましょう。
鉄にはヘム鉄と非ヘム鉄があります。ヘム鉄は動物性食品に含まれている鉄分、非ヘム鉄は植物性食品に含まれている鉄分です。卵は動物性食品ですが非ヘム鉄です。鉄の吸収率はヘム鉄が非ヘム鉄の5倍だそうです。動物性食品のほうが鉄吸収率が高いのですね。
しかし、アーユルヴェーダ的生活を実践している人々にはベジタリアンが多くみられます。サットヴァという観点からはアーユルヴェーダは菜食を勧めています。ベジタリアンが鉄不足にならないための食事のポイントをお伝えします。どんなベジタリアン食材に鉄分が多く含まれているでしょうか。
豆類
大豆は鉄分の宝庫です。日本人の食事は大豆とともにあります。大豆の煮もの、枝豆、豆腐、油揚げ、味噌など、日本人の暮らしに大豆は欠かせません。かつての日本人は大豆から多くの鉄分を摂取してきたのでしょう。しかし、食事の西洋化に伴い、いまの日本の若年層は大豆を食べなくなっているそうです。これは鉄不足の日本人が増えている一因かもしれません。
大豆に限らず、豆類にはタンパク質、食物繊維、ビタミン、ミネラル、鉄、葉酸、リン、カリウムなどが含まれています。ノンベジの方も動物性食品からのタンパク質に偏らずに、植物性食品からのタンパク質もたくさん撮りましょう。
ナッツ・タネ類
ナッツ類・タネ類は鉄分の宝庫です。かぼちゃの種、松の実、カシューナッツ、ひまわりの種、アーモンド、くるみなどには鉄分がたっぷり含まれています。たっぷり食べたほうがいいので、塩分が最小限のナッツ商品を選びましょう。私は「arima」のナッツを食べています。塩分はあるかないかわからない程度の最小限です。塩味が濃いナッツはサラダに混ぜて、その代わり塩は使わないようにするといいです。松の実はヴァータを鎮め、ひまわりの種はカファにいいです。ジェノベーゼソース(バジルソース)を作るとき、ヴァータ向けは松の実、カファ向けはひまわりの種を使いましょう。
緑黄色野菜
色の濃い野菜にも鉄分が含まれています。代表格は小松菜。外国には小松菜はありません。ほうれん草以上に鉄を含んでいます。その他、ケール、スイスチャード、ビーツの葉(日本では手に入りにくい)、大根の葉にもたくさん鉄が含まれています。葉つきの大根を見かけたら迷わず買いましょう。
ブロッコリー、キャベツ、芽キャベツにも鉄がたくさん含まれていますが、ヴァータが優勢な人はキャベツよりも小松菜、スイスチャード、大根葉がよいでしょう。乾燥ヒジキもおススメ。私はかぼちゃをコロッケ状にしてオイルで焼く料理を作りますがヒジキも入れます。
ビタミンC
ビタミンCは非ヘム鉄の吸収率を高めます。オレンジ、いちご、キーウィ、もも、ぶどう、レーズン、りんご、スイカなど、ビタミンCを含む果物を食べましょう。フレッシュトマトはそれほど鉄分を含有していませんが、ドライトマトはたっぷり鉄分を含んでいます。
ココナッツ
ココナッツミルクは鉄分豊富。鉄不足の人はココナッツミルクを摂るといいです。ただし、カファ体質にはちょっと重すぎです。
キヌア
キヌアは鉄分の宝庫です。ピッタやカファが優勢な人はキヌアを食べるといいです。ヴァータ優勢の人はご飯とキヌアを混ぜて食べるとよいでしょう。
コーヒー・紅茶は食中・食後に飲まない
カフェインは鉄分の吸収を阻害します。食中や食後のコーヒー、紅茶、日本茶は控えましょう。食後、少なくとも30分たってからにしましょう。レストランでは食後すぐにお茶類が出てきますが、鉄にとってはザンネン。食後のチャイは大好きなので、レストランでは「ザンネン」と思いながら抵抗できない私です。
生き生きハツラツとした生活に鉄は欠かせません。アーユルヴェディックな食事で鉄不足を防いでください。