アーユルヴェーダは健康で幸福で心地の良い人生を送るためにあります。体と心が健康であること。幸福とは、1億円宝くじが当たることでも、大金持ちのIT社長と結婚することでもありません。「心が穏やかで静かであることが幸福」だとアーユルヴェーダは言っています。そして、心地よい生活とは1億円宝くじが当たることとは関係がありません。いくら1億円当たったとしても、まわりが敵ばかりなら心が穏やかで静かな生活は実現しません。
これがアーユルヴェーダの目的。そのためにアーユルヴェーダには2本の柱があります。「健康な人の健康を維持すること」と「病気の人の病気を治すこと」です。健康で幸福で心地の良い人生を送りたい人たちは、健康を維持するためにアーユルヴェーダの智恵を活用することが大切です。その場合、いかにヴァータ、ピッタ、カファのバランスを維持するかがカギとなります。
一方、「病気の人の病気を治すこと」にはアーユルヴェーダ専門家(アーユルヴェーダプラクティショナー)がかかわります。もちろん患者さん本人が主役なのですが、アーユルヴェーダプラクティショナーの助けを必要とします。アーユルヴェーダプラクティショナーはクライアントのヴァータ、ピッタ、カファ(VPK)を見立てるだけでは十分でありません。なぜなら、人間は身体だけでできているわけではないからです。心も感覚器官も魂も人間の一部です。アーユルヴェーダを学ぶと、ともすればVPKだけを見ようとしがちですが、それだけでは十分でありません。心も感覚器官も考慮しなければなりません。VPKだけを見ていると病気の根本原因を見逃してしまいます。
ある女性は長年、潰瘍性大腸炎を患っていました。下痢と腹痛が続くツライ毎日でした。ステロイド剤を長年服用していましたが、一向に良くなりませんでした。この女性は文化が全く違う地方に嫁ぎ、夫の両親と同居していました。女性の症状はどれもピッタの増悪を示していました。しかしドクター・パルタップがどういう食事をしているかを聞くと、ピッタを増悪させるような食べ物を摂っていないことがわかりました。ピッタの増悪は食べ物に関係していることが多いのです。でも彼女はピッタを増悪させるものを食べていない。ピッタの増悪はどこから来ているのでしょうか。
ドクター・パルタップは彼女の生活をよく聞きました。すると女性は話し始めました。お姑さんが四六時中、彼女に対して文句を言うのです。なんでもかんでも小言です。しかし彼女は嫁という立場から反論することできませんでした。心のなかは抑えた怒りで一杯になっていました。
この怒りがピッタを増悪させていたのでした。ドクター・パルタップは「あなたは何も悪くない。病気なのはお義母さんのほうです。お義母さんをここに連れてきてください」と言いました。すると彼女の顔に笑顔が戻りました。ドクター・パルタップは脳を鎮める生薬と消化力を改善する生薬を処方しました。彼女には考え方を変えるようにアドバイスしました。人は変えられないのです。自分を守り、自分を変えることが最善の策だと。この患者さんは6カ月でステロイド剤を止めることができました。
アーユルヴェーダプラクティショナーはVPKだけをみていては十分ではないのです。VPKを越えたレベルまでクライアントの内側をみる必要があるのです。これは容易なことではありません。しかし、良いアーユルヴェーダプラクティショナーになるためには、この努力が欠かせないのです。
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